Jan 6th, 2005

la belle vie

petit_ae0410ichi011.jpg手に入れたくても手に入らないもの、簡単そうに見えてとても難しいもの、うつくしい生活。
今あたしが思ううつくしい生活、たとえばそれは通勤路のちいさな木造のおうちにある。
それはほんとうにちいさな木造一階建てのおうち。金網のフェンス越しに素通しで見えるおうちはコの字型のちいさな庭に囲まれている。住んでいるのはひとりのおじいさん。おじいさんの姿を最後に見たのは初夏くらいだったような気がするけれど、今もこのおうちで彼の生活が続いていることをあたしは知っている。
初夏には菖蒲だかあやめだかが植えられ、夏にはフェンスいっぱいに朝顔が這い、台風が来た日には入り口に戸板を打ちつけ備えていた。そして朝には庭の奥の物干し竿にハンガーに吊るされた白い肌着がはためいているのを、そして昼過ぎには洗濯物は取り込まれ夏の忘れ物の風鈴だけがゆらゆら揺れている、そんな毎日を通勤や仕事の合間に垣間見ているから。
彼だけが生活によって時間を刻んでいるかのように思える。素朴でなんとうつくしいことか。きっと彼にとっては当たり前の生活なのだろうと思う。そのことがまたうつくしくそしてあたしにはけして手の届かないもののように感じられるのだ。

by nao :: 03:14 :: diary

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2 comments


  • いい文章でした。
    素敵な目をお持ちなのだなあと思いました。
    この視点がたくさんの写真も生み出しているんですね。
    景色と思いが浮かんでくる本当にいい文章でした。

    by んちば — January 6, 2005 @ 9:43 am

  • ありがとうございます!受け止めてもらえてうれしいです。最強の誉め言葉いただいちゃいましたっ。 :)

    by nao — January 7, 2005 @ 1:12 am


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