Dec 3rd, 2006

willy ronis

willyronis.jpg土曜日、静岡のコンベンションアーツセンター(グランシップ)ウィリー・ロニス展を観に行ってきました。

ウイリー・ロニスって、去年ロベール・ドアノー観に行ったときに今回の写真展のアナウンスがあってその時初めて名前を知ったの。
彼はドアノーと親交があった写真家なのだそうです。日本ではあまり知られてないけれどフランスではかなり評価されているらしい。という前情報を元に(というかこのグランシップの秋の写真展、ブレッソン、ドアノーと続いてきた第3弾目ってゆうだけでもう行くしかないでしょ?みたいな)前々からこの展示を楽しみにしていたのでした。
そいえばこの“バスティーユの恋人”、写真展の宣伝にあちこち使われてたけど、これってやっぱりドアノーの“市役所前のキス”を意識して選んでる?

つか、前回のドアノー、ぜんぜん感想書いてなかった!ひゃー。
今さらですがドアノー、小粋な、そしてちょっとシニカルなパリジャンらしい写真は素敵でそして観ていて楽しかったです。
わぉ、ドアノー、今パリ市庁舎で写真展ですって。(リンク先、もちろん読めてるわけじゃありません/笑)いいなー、行きたい行きたいー。求ム、どこでもドアー!!(笑)

でもってロニス。

ブレッソンのピシリと決まった天才的な写真やドアノーの機知に富んだ写真とはまた違う、実直な人柄を感じさせる写真。奥からの柔らかなひかりとどっしりとした陰影。等身大の目線。

例えば数多い窓越しに撮られた写真。
こっそりと隠し撮ったというよりも例えばカフェで、または友人宅の玄関口でふと窓の外を眺めたとき目にした光景をそのまま写し撮った、そんなふうに自然な姿に思えるの。それこそが本来の目線かなと思えるような。
出征する青年とその恋人の別れを惜しむ逢瀬を、窓にかけられたカーテンのレース越しにそっと捕らえた写真や、しっかり目線が合っているのにピントは少し手前のガラスにおかれた肺を患った老炭鉱夫のポートレートなど、ロニスの人柄をよく表しているんじゃないかと思いました。

今回の写真展のポスターにも使われていたホンダメンタ・ヌォーヴェも素敵。
ちょっとこのリンク先の写真は実際に観たのよりも暗く出てる気がするんですけど…写真の左側と右側とのコントラストの差と左から右へと渡る女の子の姿に、まるで現実世界から幻想世界へ連れて行かれるような気持ちになりました。うん、これは実物をぜひ観てもらいたいなぁ。

でも一番あたしが好きだったのは息子(義理の…だったのは今知りました)ヴァンサンがカフェオレカップを抱えている写真。
ちっちゃいヴァンサンが両手でカフェオレカップを傾けて飲もうとしている姿なんだけど、目だけが「なぁに?」って感じにカメラを向いてるの。後ろからは薄暗いお部屋に朝の光が入り込んで彼の小さな耳を透かしたり腕のほわほわした毛を浮き立たせていて、それがちいさな家族の静かで平和な朝を感じさせるの。

なんてゆうか“強烈な”ってゆうのはないんだけど後で振り返ってまた観たくなる写真たちでした。
つか、今また観たいのだ…。なんとなくそんな気はしてたのに貧乏人はケチって写真集を買わなかったの。ああ、バカだー。明日時間間に合ったら買いに行ってこようかなぁ。

写真展の中でどうにも気になったロニスの言葉をふたつほど….(石田徹也展の時うろ覚えで懲りたので今回はメモってきたのだ。撮影禁止だったので特に気になるとこだけ殴り書きで/笑)

  • 提示されたイメージは心で抑揚づけられた幾何学である。
    (写真家は黄金率で構図を決めているわけではない、直感と感覚に導かれて作り出しているというような文章に続けて書かれた言葉)

  • 視線と呼ばれるものは生まれつき持っているもので、より良く動くカメラで撮れば直ぐに明らかにされる。
    写真家は最初のイメージの中に、自身のパーソナリティーが全て含まれていることを晩年になって気付く。
    妙なことだが、上達していないことを再確認するのだ。

またひとり、好きな写真家が増えました。 :)

ああ、そうそう、今回のこの写真展はazuさんとカトウ氏と3人で行ったんだけど、3人ともどうやら自分のペースで観たいひとだったみたいで結局ばらばらで観てました(笑)。
展示内容によるけど大抵こうゆう写真展はひとりで入り込んで観ちゃうので(って自分の性格分かってて誘うほうも誘うほうだけど….スミマセン)その辺の観方が似てるひとたちでほんとよかったです。 :)

ああ、それと、展示。
ちょっと額入りのんが位置低かったせいか映り込みが気になったー。むぅ。
でもサーカスの写真で門に続く道をペンギン3匹ならんで歩いてる後ろ姿の写真と、登(下?)校中の子供が3人コートのフード被って歩いてる後ろ姿の写真とを並べて置いている遊び心ににっこりでした。

来年の写真展のアナウンスは何も出てなかった(と思う)けど、ぜひ来年もまた素敵なのをやって欲しいなぁぁー。もうすっかり秋の楽しみのひとつなのだ。
あ、そうそう、グランシップでこのウイリー・ロニス展のブログを立ち上げてました。ロニスにまつわるエピソードとか(特に最初のほうに)書かれててなかなかおもしろいです。

by nao :: 21:52 :: art, photo, shizuoka life

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